事例ファイル【相続】相続人の中に意思能力のない人がいる家族

■相続人の中に意思能力のない人がいる家族

70代の父親からの相談です。

妻が10年前にお亡くなりになり、40歳の長男と37歳の長女がいるのですが、長男が5年前に脳梗塞で倒れて半身不随、現在は施設に入所しています。長男は結婚もしていないし子供もいないので、父親と長女家族が支えていかなくてはならない状況です。

父親の心配は、「父親亡き後の長男の生活や金銭管理のこと、このままでは相続時の遺産分割協議ができないのでどうすればよいか」といった内容でした。

父親が亡くなったら資産について長男の場合、意思能力がまったくないので遺産分割協議ができなず、こうなってしまった時には、成年後見制度を利用する以外に方法はありません。後見人は裁判所で選任されますが、この制度を利用すると相続時の遺産分割協議では長男が相続する財産は法定相続分が基本です。長男の面倒をみるために長女の取り分を多くし、長男の法定相続分を少なくするには裁判所の了承を得なければなりません。また一度、成年後見制度を利用し後見人が決まると後見人は長男が亡くなるまで続くことになります。後見人への報酬も発生しますし、長男に不動産のような財産があれば裁判所の許可がなければ処分などもできないことになります。

父親がお元気なうちに「遺言書」の作成をお勧めしました。

遺言書の内容は、まず大前提として長女と家族が長男の世話をすること、そのために遺留分に反しない程度で長女に多くの資産を相続させること、不動産資産についても長女の判断でいつでも売却ができて長男の生活資金に充てられるようにすることとし、死亡保険金の受取人も長女に変更する手続きを行いました。