事例ファイル【債務・相続】業績不振会社の経営者の家族

■夫が死亡、そして会社が破たん、残された家族はどうなるのか?

62歳の夫の経営する会社は全盛期にはパートを含めた従業員が50名、売り上げは4億円を超えることもあったのですが、大手衣料メーカーの下請けの仕事が8割以上だったうえ、親会社から外注先を海外へシフトするとの理由で売り上げが急速に減少し、経営は悪化する一方でした。

家族は58歳の妻である私と既に独立している30歳の長男と28歳の長女でしたが、夫の会社を継ぐ意思もなく、継がせるつもりもありませんでした。今後の先行きに大きな不安と苦悩を抱えていた矢先、夫は急性心筋梗塞で突然の急死でした。

会社には1億8千万円の負債と数人の従業員が残っていました。このまま夫の財産を相続すれば私たち家族は会社の連帯保証人の地位も引継ぎ、1億8千万円もの債務を背負うことになってしまいます。

弁護士に依頼し、「会社清算」と「相続放棄」をお願いしました。

これまで住んでいた自宅不動産、預貯金、有価証券など全て夫名義だったので私の今後の生活の見通しが立ちません。そんな折、夫の遺品を整理していたところ、保険受取人欄に妻の名前が書かれた「生命保険の証券」を発見しました。

夫のメッセージが書かれていて、「妻よ。万が一のためにこの生命保険を残します。この保険金で何とか生活してください。いつも本当にありがとう」

生命保険金は「みなし相続財産」といい、本来の相続財産とは異なり、相続放棄をしても受け取ることができるものです。みなし相続財産は税法上は相続財産として扱われ、相続税の対象にもなるものですが、受取人の固有財産なので実際は妻が受け取ることができます。

夫のやさしさに心から感謝した瞬間でした。