事例ファイル【家族信託】共有不動産のトラブルを回避!

86歳の長女、83歳の長男、80歳の次男、78歳の次女の4人は25年前、父親の相続により築45年の古アパートをそれぞれ1/4ずつ、共有で所有しています。現在は次男がこのアパートを管理していますが、今後のアパートの管理、修繕、賃貸借契約など、いつまでやれるか不安があります。最近では長女の物忘れが激しくなり、アパートについて次男から報告を受けても本当に理解できているか否かの状態です。

長女の判断能力が低下してしまい、認知症と判断されてしまうと法律行為は一切できなくなり、アパートを建て替えたり、大規模修繕をしたり、売却することが出来なくなってしまいます。その際に成年後見制度を活用することも一部では可能ですが、建替え・売却・大規模修繕といった行為に対しては裁判所の許可をとることが困難になってしまいます。

長女の認知症対策として、長女の持ち分1/4について長女を委託者、長女の子供(男性、60歳)を受託者として信託契約を結ぶことにより長女が認知症と診断されても、本人に代わり法律行為をすることが可能になります。長女の子供が勝手な暴走行為をしないためには、未だ若い次女も一緒に長女の受託者になれば安心です。

また長女の子供が長男・次男・次女から信頼されている人柄であれば、4人の兄弟姉妹の認知症対策として長男の子供が4人全員の受託者になることにより、このアパートの建替えや大規模修繕や売却といった法律行為が可能になります。もちろん長女の子供が万が一にも私利私欲で暴走行為をすることも考慮し、受託者を他の兄弟姉妹の子供や専門家を入れることも大切です。

話し合いの結果、4人全員が委託者兼受益者、長女の子供と次男の子供の2人が受託者になり、司法書士に公正証書により信託契約書を作成してもらい、信託登記も完了しました。なにかあれば受託者二人の同意により、大規模修繕もできますし、売却も可能です。これまでアパートを管理を任されていた次男も安心して受託者に任せることができ、さまざまな不安は解消されました。

今回の長女の物忘れから、アパートの塩漬け状態を防ぐことができた事例でした。