事例ファイル【相続】独身の三男が突然、病死してしまった!

72歳の相談者から三男の実弟が突然死してしまい、その相続手続きについての相談です。相談者は5人兄弟の次男であり、他に遠方で暮らす長男、三男、四男、五男がいました。5年前には四男が若くして他界しており、奥様と4人の成人した子供が健在です。また五男は婿養子になっています。

相談者は同じ町に暮らす独身の三男と仲良く、家族ぐるみで親交していました。三男は非常に真面目な性格で、若い時から勤務していた会社を定年退職後も引き続き同じ仕事に従事しておりましたが、70歳を契機に退職し若い時に購入した自宅について、老後も快適に住めるようにしようと大規模なリフォーム工事を行った矢先に身体の不調を訴え、総合病院へ検査入院することになり結果、末期がんの宣告を受けました。その後、相談者の熱心な介護で回復の兆しも見えましたが、3カ月後に帰らぬ人なりました。

入院中に三男は、預金通帳を相談者へ預け、治療費などの支払いを本人に代わって相談者が行いました。三男の入院中、長男と五男は一度も心配する連絡や見舞うこともありませんでした。三男の死後、相談者が葬儀一切を行いましたが、長男も五男も「早く相続財産を俺たちに分けろ!」という言葉だけでした。

相談者は相続についての知識や経験が全くなかったので、弊社の相続勉強会に参加されました。三男は婚姻したことがなく子供もいなかったので、三男の相続人は長男、相談者(次男)、五男、既に亡くなった四男の子供4人になります。相続割合は兄弟には財産の4分の1、四男の4人の子供にはそれぞれが16分の1の割合が法定相続分になります。このままでは預貯金については分割可能ですが、自宅の土地建物は相続人全員(7人)で所有権を相続することになってしまい、それぞれが持ち分登記することになるので、将来の財産争いが心配なので売却することになりました。

個別相談の結果、不動産については相談者(次男)が単独で相続し、速やかに売却を行い、売却代金から費用を差し引いた金銭と預貯金をそれぞれの相続人へ法定相続割合で分割する内容で司法書士に依頼し、遺産分割協議書を作成していただきました。分けられない不動産を一人が相続し、売却した金銭を分けることを換価分割といいます。幸いにも三男は35年前に自宅を購入した時の土地の売買契約書、建物の請負契約書、領収書などを保管していたので、不動産を売却した際に支払わなければならない譲渡税については課税されないことが分かりました。

その後、三男の初七日をはじめ一周忌を行いましたが、長男も五男も一度も参列していません。三男の弟とは生前の頃からそんな兄弟関係でしたから、亡くなった弟(三男)が自分の財産を法定相続人全員に均等に分割することを望んでいたのか否かは分かりません。相続勉強会で兄弟には遺留分はないと学ばせていただきましたので、生前に弟(三男)の意思を遺言書にしておけばよかったと今でも後悔しているそうです。