事例ファイル【相続】遺留分について考える
76歳の男性Aさんからの相談です。Aさんには自宅以外にアパート1棟とコンビニエンスストアに定期借地している約300坪の土地を所有されています。長男が40歳になった機会に奥様、長男、次男、三男と共に、資産の承継について家族会議をしたそうです。次男と三男は他県で生活していることもあり、不動産資産については、Aさんと同居している長男に相続させることについて、家族全員が同意したそうです。
しかしAさんには前妻との間に1人の子供、Bさん(50歳、女性)がいることが気がかりです。たまたま奥様と二人で参加した相続セミナーがきっかけで、自身の相続対策について個別相談したところ、Aさんの相続財産を相続する権利が離婚した前妻との間のBさんにもあること、仮にAさんの不動産すべてを家族会議で決めた通り、長男に相続させるようにとAさんが元気なうちに公証人役場で遺言書(公正証書)を作成したとしても、BさんがAさんの資産に対して遺留分を主張することができるということを知りました。
遺留分とは本来、法定相続で決められた割合、このケースでは今の奥様が1/2、長男と次男と三男とBさんが1/8ですからその1/2、つまりBさんには遺留分として1/16の権利が生じています。遺留分請求はBさんがAさん(父親)がお亡くなりになったことを知った時から1年を超えた場合、または相続を開始した時から10年が経過すると消滅します。また遺留分は当然に資産をもらえるものではなく、Bさんが他の財産を相続した人に請求することになります。実際の請求は弁護士に委任して行われることが多いですが、仮にBさんが遺留分請求を行えば、Aさんの相続は争族になりかねません。このことを遺留分侵害額請求といいますが、相続が争続にならないためにも、Aさんがご自身の相続を考える際には、Bさんの遺留分として相続財産の1/16相当の現預金といった財産を準備しておくことが大切だと知り、もう一度、家族会議を行うこととしました。