事例ファイル【相続対策】遺言書の作成(お子さんのいない夫婦)

遺言書は、ご自分の財産の分け方をご自分が元気なうちに決めておく方法です。83歳のAさんと80歳のBさんは不動産相続の相談窓口で相続セミナーに参加されました。お二人には子供さんがなく、財産といえば少しの現金と若いころに共働きで購入した自宅不動産だけです。自宅不動産はそれぞれが2分の1の共有名義になっています。

もしAさん、Bさんのどちらかに相続が発生したら、それぞれの兄弟姉妹に4分の1の法定相続分の権利があることを学びました。Aさんは4人の兄弟姉妹の次男で、兄は既に亡くなられていてその子供が2人います。姉と妹は今のところ、お元気です。Bさんには弟がいましたが3年前に亡くなられ、弟には4人の子供がいます。もしAさんが亡くなられればAさんの財産は4分の3がBさんへ、4分の1はAさんの姉と妹と亡くなった兄の子供2人へ分配されることになります。またBさんがなくなられればBさんの財産は4分の3がAさんへ、4分の1が亡くなった弟の4人の子供へ分配されることになります。

預貯金など分けられる財産があればいいのですが、財産がほぼご自宅だけの場合、法定相続通りに分配するにはご自宅を売却し現金化しなければなりません。結果的に残された配偶者(AさんまたはBさん)は、住む場所がなくなってしまうこともありえます。

2人はセミナーに受講後、個別相談を受けました。AさんBさんのようにお子さんがいないご夫婦の場合、お元気なうちに遺言書の作成が必要だと教えていただきました。兄弟姉妹には遺留分という権利がないので、遺言書を作成しておけばAさんBさんの希望通りの相続(分け方)ができるのです。2人は以前から、Bさんの弟の次男のお嫁さん(Cさん)と親しく交流しており、AさんBさんが亡くなった後の始末をCさんにお願いしたいと願っていました。

司法書士に依頼し、一方が亡くなったらその財産は配偶者へ相続させ、両方が亡くなった時点で残された財産はCさんに相続(遺贈)するよう遺言書を作成しました。遺言書の話し合いの中でCさんは、残った財産を受けとることを拒否しておりましたが、2人がなくなった後の葬儀や納骨といった死後事務の手続きと、すべてを清算した残った財産は福祉法人へ寄付することで承諾してくれたと2人とも嬉しそうに話していました。

お子さんのいらっしゃらないご夫婦の場合、遺言書の作成は必須であると思います。お元気なうちに出来れば公正証書遺言を作成しておきたいものですね。