事例ファイル【相続税】賃貸アパートの相続税評価と節税について
最近、よく聞く相続税の節税対策としてアパートの建設をお聞きになったこともあると思います。なぜ節税になるのか、検証してみます。
今、何も利用していない仮に1,000㎡(約300坪)の土地を所有していたとします。場所は居住に適した便利な場所でしたので日頃から「アパートを建てましょう。」といった建築業者さんの営業が絶えませんでした。
その際、必ずと言っていいほど、「アパートを建てると、相続税の節税対策ができます。」でした。なぜ、節税対策になるのでしょうか?順をおって説明していきます。
1,000㎡の何も利用されていない土地の相続税評価額(相続税を計算する上で土地を評価する価格)の算出方法は、国税庁が毎年発表している路線価に基づいて計算します。路線価とは接面道路の1㎡あたりの相続税評価額をいいます。毎年1月1日現在の価格を7月ころに新聞紙上で発表されます。東京の銀座5丁目、中央通りの鳩居堂という文房具店前の路線価が話題になります。この場所の最新の路線価図の数字は「42240A」と記載されています。これは千円単位なので、1㎡あたり42,240,000円ということになります。坪で換算しますと1坪あたり、約1億4,000万円になります。
所有している土地の路線価が100Eと表示されているとします(1㎡あたりの路線価は10万円)。つまりこの土地の相続税評価額は、10万円×1,000㎡=1億円になります。評価方法は道路に対する土地の間口や奥行、土地の形や広さ、平地が高台かなどにより算出しますが、ここでは単純に1億円とします。つまり、何も利用されていない土地を所有した状態で相続が発生すると、この土地だけで1億円の相続財産として相続税の計算をすることになります。
次に銀行から1億円の融資を受けて、この土地にアパートを建てた場合を考えます。土地は「貸家建付地」として評価されますから、8,000万円になります。
建物の相続税評価は固定資産税評価額で算出しますから、1億円で建てた建物であれば5,000万円ほどになります。その上、「貸家評価」により3,500万円になります。
アパートを建てたことにより土地は8,000万円、建物は3,500万円になり、相続税を計算する際はプラスの財産から借入などのマイナス財産を差し引くことになりますから、8,000万円(土地)+3,500万円(建物)-1億円(借入残高)=1,500万円がこの土地とアパートの相続財産になるわけです。何も利用しない土地は1億円、アパートを建てれば1,500万円になる訳ですから理論上は確かに節税対策になります。
ただし、アパート経営を行うのですから家賃設定、諸経費やアパートの入居率、メンテナンスなどを考慮しなければなりませんね。