事例ファイル【相続・姉妹】親と一緒に財産を築いた相続人がいる家族
■相続税の申告期限1カ月前に遺産分割協議書に印鑑を押してと言われて‥‥
今年の1月に母が亡くなり、あっという間に9カ月が経過した頃、母と同居していた姉から妹の私に、会いたいと連絡がありました。
姉のところへ行くと「これにサインして」と書類の束を渡されました。書類には「遺産分割協議書」と「相続税の申告書」と書かれていました。
同席していた姉の税理士から、「お母さんの主な財産はこの自宅、お姉さんと一緒に経営していた会社の株、そして現預金です。ちなみに相続税の評価額ですが、自宅は2,000万円、会社の株は赤字なので0、現預金が1億円です。お母さんが生前に『自宅と会社はお姉さんに引き継いでほしい』と話していたということで遺産分割協議書はそのような内容になっています。」ということでした。遺産分割協議書には、姉が取得する分として自宅、会社の株、現預金5,000万円とあり、妹が取得する財産は現預金5,000万円と書いてありました。このとき、母が生前に「自宅と会社はお姉さんに引き継いでほしい」という言葉が妙に私の心に引っ掛かりました。
その場では、「一度帰って、主人と相談してくる。」というのが精いっぱいの反論でいsた。
主人は冷静に今日の話を聞いてくれ、まず、お母さんが言ったであろう遺言は遺言書がなければ無効なのではないか、次に、会社の評価が0というのが気になるので決算書を見せてもらえないかと2点のアドバイスをもらいました。早速、姉にそのことを話すと、「生前にお母さんがそう言っていたんだから、私がもらって何が悪いの。会社はあなたには関係ないんだから決算書なんか見せる必要はないでしょ!」と怒った様子でした。
私が姉に言っても効き目がなさそうなので、主人の会社のA税理士から姉の税理士へ直接、聞いてもらうことになりました。
すると姉の税理士からの回答は、「妹は姉である私に文句を言うようなタイプではないので、私の言う通りに遺産分割協議書と相続税の申告書を用意してほしい」と姉から依頼を受けたとのことでした。
A税理士が姉の税理士から実際の遺産分割協議書と相続税の申告書を見せてもらうと、自宅については時価評価は1億円あり、小規模宅地の評価減の制度を利用して8,000万円の減額を受けて2,000万円になっていたこと、会社は借入金でビルを購入していて、その結果株価は0円になるが、家賃収入が年間3,000万円あり10年経つと借入金返済も終わり、実際には価値が高いことが分かりました。
結局、話し合いがつかず、姉と私は家庭裁判所で調停を行うことになり、現預金の8,000万円は私が相続し、現預金の2,000万円と自宅と会社の株は姉が相続することになりました。
調停以降、姉と私は顔を会わすことも会話をすることもなくなってしまいました。今にして思うことは、私は決してお金をたくさんほしかったわけではなく、姉の言動や考えで母の遺産分割を勝手に決められ、だまされているような感じが嫌だったのです。
最初から姉に、「母の財産は2億円で、自宅と会社の株は私がほしいので、現金5,000万円で納得してくれない?」と言われれば「OKです。」と言っていた気がします。